原田知世初主演映画『時をかける少女』(1983年版) 感想BS11放送2022.08.28

1983年作品

1983年大林監督作、原田知世初主演作品。

7.80年代のアイドルが映画初で出ようものなら、テロップに‘初主演(第1作目)映画’と出てしまう時代。 だがTVドラマやらを経て初主演映画にしてもアイドルは棒読み、下手っぴと言う印象があった。 何より、ウィキペディアによるとこの作品自体、角川社長のポケットマネー。

自費映画で自由と言ったところが特徴だ。

 アイドル…と言えば、この時代、ピンクレディーや百恵ちゃん、明菜、その他たくさんのアイドル黄金時代だったと思う。 忙しさが今の比では無く、年数回しか休めないと言う。

その若さと勢いで、勿論カリスマ性が無ければ続かなかったであろう。アイドル達は歌手だけで役者としては、大根役者とも言われたと思うが…しかも、大きな作品の主演でコケた映画もあるかもしれないし、映画の後にやはり役者は無理と思ったかもしれない。

原田知世もウィキペディアによるとこの作品の後に、もう同じように歌えなくなったと書いてあった。 一度流行ると、そちらの様な似たような作品を求められがちになるが、その通りで。 同じような歌を求められたのか…。

原田知世自身が、“時かけ”の歌を求めても同じ様な歌になるのでこの歌は、あまり当時の様に歌えなくなったんだろうな。

あの時のあの演技とか声とか仕草は、その時にしか出せない。持って生まれたのを写実的に描いた大林監督はどうも、サイケデリックな演出な印象なんですけど。もう…この“時かけ”の前にこの監督の映画“HOUSE”を子供の頃に地上波で見てトラウマになった私にとっては何とも言えないんです。

他の作品、“転校生”やらを見えませんが…もう見なくても良いし、凄いよこの人!とも表現し辛いですよ………。それくらい、“HOUSE”がトラウマなんです。今でこそ、夫の影響でホラー映画バンバン見てますが。 “HOUSE”から10年以上ホラー映画は望んで見なかったですから。

この映画、角川社長(現会長 角川春樹)が見出した原田知世に、大林監督がそのポケットマネーに原田知世の魅力を個人的に詰め込んで作ったような作品と言われてるが-…あの、原作は筒井康隆です。原作者をもっと押すべきです。 映画は自分の手柄のように言ってるように聞こえるけど、筒井康隆が偉いんですよ。

 学生の時に筒井康隆にハマって読んでいた私ですが、興味を持ってかれてこの面白いSF作家の作品を何作か読みました。 その原作小説が、あの時代…1967年作ですよ?恐らく高度成長期時代。夢のある、けれど突拍子も無いような物語をよくぞ、描いてくれましたよね…。

素晴らしすぎる作品を生み出した筒井康隆先生をもっと、賞賛されるべきですよね。1970年からこの2000年代まで…しかも今年にも数々の賞を獲っている訳ですがもう、ご存命なだけで尊いしウチの父親よりも介護したいレベルで尊敬してます。

ちなみに父と筒井康隆先生は同じ年生まれでした…調べたら。

 さて、そろそろあらすじと感想を書いていきます。ちなみにBS11放送の冒頭30分見逃しシーンはVODで見直しました。

原田知世主演 映画『時をかける少女』あらすじ

芳山和子(原田知世)はスキー教室に来ていた。星空を眺め、幼馴染の堀川吾郎(尾美としのり)と未来を語っていた。 “いつか素敵な男性と出会うかも…”夢見る夢子さんの様に、和子は話す。妄想をしていると、自分をお姫様抱っこしてくれる男が…。

ハッと気付くと、深町一夫(高柳良一)が目の前に。クラスメイトの深町くんは、吾郎ちゃんくらい和子と仲良い近所の男の子。

 吾郎は“深町は居るんだか居ないんだか分からない”と表現した。 そのせいか、深町のスキーセットが見当たらないーーー。 スキー教室も終盤。ナイトスキーで夜に光を灯しながら、山を降りる光景は、例えるなら看護師学校卒業のキャンドルサービスに似ている…。

キャンドルサービス(イメージ画像)

 帰路の電車では、吾郎の横に和子が座り、ムードメーカーなのか明るく先生とお話しをする。 そこへ深町が野草を持って現れる。 途中停車の駅で、摘んできた花だ…と野草を愛でる様子が伺えた。 和子や先生はそんな深町の事を、乗り遅れたら大変だと話す。

 土曜の半ドン(午前中だけ)の授業に登校していた生徒たち。担任の立花(根岸季衣)は“桃栗三年柿八年…”と授業で話す。和子は見事そのあとの句(梨の大馬鹿十八年)を言い、昔、知っていた(歌った事)がある様な?と幼き自分を思い出す。 立花は、昔の歌にはそう言う伝承を伝えているものもあると言い、まだ梨よりも若い(クラスメイト全員16歳)キミ達はこれからも色々吸収していきなさいと話す。

 次に国語の福島(岸部一徳)が授業をし、日直に化学室の鍵を渡す。最近、化学室(実験室)から音がするので鍵を付けた…掃除の生徒に渡す様にと話す。

 和子、深町、吾郎は化学室の掃除をし、終わる処で和子は2人にゴミ捨てを促し、あとは自分でしておくと話す。 吾郎と深町はゴミを学校の焼却炉に捨てる。吾郎は和子を母親みたいに、手を洗えだとか言われると、深町に告げ、焼却炉の後に手を洗ってくると手洗い場へ行く。

 和子は1人、教室で片付けを終える処で、実験室の中から音が聞こえる事に気付く。鍵を施錠している筈の実験室。鍵を開けて見ると音はしたが、誰もいない。 ただ、床にはフラスコから煙が噴き出し、和子は床に倒れ込む。“嗅いだことがある匂い…”

 深町は吾郎を待たず、教室に3人分の荷物を取りに行き、化学室に向かう吾郎と合流する。和子を呼ぶ吾郎だが、居ない。 実験室の鍵が開いてる事に気付き入るとそこには…床に倒れ込む和子が。

 深町は倒れた原因を探り、吾郎に保健室まで抱いて運んでくれと言う。ただ、吾郎1人だと重かったと、吾郎は深町と2人で運び込む事に。

 保健室で倒れた和子に血圧を測ったり様子を見る先生。担任の立花は“貧血でしょう”と言い、福島先生もその場に来ていて、和子を心配する。 吾郎は和子が床に倒れた時に近くの植木からか土が顔についてるのを拭おうとハンカチを濡らし、側に来る。

 和子が目覚め、顛末を話すが、深町は誰も実験室に居なかったし、煙も立ち込めてなかったと言う。和子は納得がいかない。掃除を頼んでしまった福島が実験室に行こうとすると、和子も一緒に行くと。顔は土まみれ。吾郎がハンカチを差し出す。

顔を拭いながら皆で実験室に向かう。確かに、実験室には、誰もおらず、フラスコも倒れていない。 和子は“前母の香水のラベンダーを嗅いだ事があるから、ラベンダーの香りで間違いない”と話す。

 帰り道を送る深町と吾郎。手前が吾郎の醤油屋。そして、和子の家の途中が吾郎の家…。1人で帰れると和子が言うが、送ると言う吾郎。吾郎は、ついでに家に寄ってと声をかけ、吾郎の両親も庭でお茶をしていて和子に気付き、誘う。

 吾郎の家の中に招く途中、和子は‘あの’ラベンダーの香りに気付き…深町に言うと、親の温室にあるのではと言われる。和子は少し強引に温室を見せてとねだると、気乗りしない深町が温室に案内する…。 温室に入ると、ラベンダーの香り。和子は、気が変になってくるー。

 吾郎にやはり家に帰ると告げ、家に戻る。 日曜の翌朝迄、グッスリ寝込む和子。目覚めると、デジタル時計があり得ない数字を出していた。(60分と言う数字をゆうに超えている) 目覚ましを叩くと11時ごろを指していた。

 ようやく居間にいくと和子の母が、休みの日だからと言って休み過ぎと言い、紅茶を飲むかと、聞く。 静寂があり、和子の目の前の何も入ってないカップに紅茶が湧き出た様に注がれていた…。

母が台所に行った筈が、反対側から出てきて驚いていると、母は「せっかく紅茶を淹れたのに冷める」と、まるで淹れてから時間が経った様に告げる…。

吾郎の家に行き、話そうとする和子。手には吾郎に借りたハンカチを持っていた。 吾郎は、‘今は話しかけないで’と真剣に醤油を樽から瓶へ注ぐ。 真剣な眼差しの吾郎に変になったと言えない和子。 ハンカチは洗い済みだと渡す。

醤油の匂いがするハンカチで吾郎のハンカチの匂いは好きだと告げ、帰る。 和子が帰った後に、母が大学に進学すれば良いと話すが吾郎は醤油屋の倅だから、此処で働くと話す。 

 翌日、登校した和子は授業をあてられるが、答えられない。土曜に倒れたと聞いたとクラスメイトから聞かれ、体調を心配される。体育の授業は平気だと出席する和子。 だが、体育の授業では、少し壁にもたれていた時に、深町が心配し、側に来る。

 和子はその後も弓道部では、的を当てるが…。和子は違和感を感じて走っていってしまう。

 翌日、ベッドで朝目を覚ます和子。朝食が今日も間に合わないと牛乳だけ飲み、お弁当をしまい、カレンダーを見、妹が日めくりカレンダーを破ってないと気付く。

 登校してると、福島先生が‘昨日と同じネクタイをしていて’昨日と同じネクタイ、似合いますねと言う。側にいた立花が‘昨日、誕生日プレゼントしたのに同じ柄を持っているなら言ってくれればよかったのに’とむくれる。

 教室では、同じ授業…?和子は昨日と同じ授業で夢でも見てるのかと言う顔になる。クラスメイトに体育の授業を出るのかと聞かれ…。

 昨日と同じなのに、同じではない行動をするが、翌朝の目覚まし。前日と違う時間。だが、同じ日常。和子だけ同じ日を、行き来している事に気付く……。

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原田知世主演映画『時をかける少女』感想

まずは、やはり大林監督はサイケデリックな演出といえよう。当時からしたら、オシャレ。一歩間違えばサイコですらあると思うのだが。 冒頭の雪山、スキー教室のシーンでは、ナイトスキーで光を灯しながら降りるシーンがオシャレ。

まずそんな雪山、白と夜空の黒しか無いから、カラー映画時代にわざわざ、白黒映像で始まった処がオシャレ。…モノクロの世界は、あの時代でもオシャレだったんだろうか。

電車で学校に(?駅解散かな?)戻るシーンで、深町が野草の花を手にする処から、カラー映像になるのは、深町くんがこの映画のキーパーソンだと言う位置付けを印象付けたかったんだと思う。

 そして、男女になる前の成熟してないまだ幼さも残る和子と吾郎と言う幼馴染の関係。醤油屋さんでのシーンは会話と共に、まだ‘男女に成って居ない’未熟であり純情な恋愛であるかの表現を感じる。

その前の和子が保健室から去り担任の立花が‘あの子生理では”と言うシーンと、立花が福島に好意を寄せ、福島が立花の半ズボンの下の健康的な脚を見る(映し出す画面)と福島にネクタイを誕生日にプレゼントした(前日に一緒に過ごした匂わせ)セリフが、大人の男女のシーンで、深町及び吾郎と和子の対比になってるであろう事は言うまでも無いが。

 艶かしい様なシーンはほぼ無いが、担任の立花の脚を移したり、立花が和子の事を“生理で…(倒れたのでは)”なんてセリフはもう、今の世の中ではコンプライアンスにかかり過ぎて映画に出せないであろう。

 体育のシーンで白いブルマだと言う処が…もう、時代を感じる。 それにしても、皆、裕福な家に住んでますね…。高校には裕福では無いと行けなかった感じかな。あと、田舎が舞台なので、そう言う富裕層ばかりなのかなと。

 醤油屋のシーンでサザエさんの三河屋のサブちゃんみたいな醤油屋の御用聞きみたいな…下宿人?も居ました。吾郎の事を“お坊ちゃん”と呼んでいたので。 吾郎ちゃんの家は大きな醤油屋さんなんでしょうね。確かに大きな家には見えたけど。

何度も繰り返すタイムループらしいものを、幼馴染の吾郎ではなく深町に話す処がもう、深町に惹かれていたのであろう。 深町は、タイムループ(昔は言葉的にタイムループは無かった。wikiによると、‘ループ’というのは1987年の作品で概念が出来たそうだ)と言う言葉ではなく、テレポーテーションと言った。

そして、深町は何度もタイムループする和子の話しを聞き、遂には和子が深町との思い出の幼い頃の記憶が吾郎ちゃんとの記憶と重なる事に気付いたのが、指の怪我。

幼い頃の歌(桃栗三年柿八年の挿入歌)の記憶も、吾郎とだった。 そのまま和子はタイムループの旅に…時空に巻き込まれるシーンは、切り絵の様な中で右往左往し深町くんを探す旅になったが…。 そのシーンもサイケデリックというか。一見するとオシャレな作り。

だが、CGが無かった時代で精一杯のコンピューター処理というか画像切り抜き処理であった。 あの時代の努力は凄いけれど…。

 ただよく考えたら、深町が未来人で失われた未来には緑などが無いからタイムトリップして来たって言い分が、ワガママだと思った。

そして吾郎ちゃんの記憶を深町との記憶に塗り替えたり、深町家に子供が居ないのをいい事に、深町家の子供と言う設定で入ってしまったのには、許せないと思う…。 当時、原作小説を読んでいた時はそんな事思わなかったと思うのだけど。

 ちなみに原作小説を覚えていないのだが。深町くんは、とんでもない男だと思う…映画見る限りだと。吾郎ちゃんと和子の大切な民謡みたいな歌の思い出も、すり替え、幼馴染と言う特権も、もしかしたら初恋だったかもしれない感情も潰した(記憶を塗り替えた)人。

それに終盤で、また未来で会えるよ…って、とんだラブストーリーですね、今見ると。深町くんと言う未来人にガッカリしました。 原作を読み返したい…。こんな印象ではないよね、深町くんの原作は多分。

良かったのは冒頭のモノクロからカラーに移る場面とナイトスキーの景色。そしてエンドロールが原田知世が歌う主題歌でPVみたいになってる処だけです………。

原田知世が大根っぽい喋り方がちょっと、ヒロインだけど…。純情で綺麗なイメージなんだろうけど、今見ると美人でも可愛いでもない顔な印象なんですけど。 めちゃくちゃ可愛く演技も上手く舞台が、尾道じゃなかったらまた違いましたよね。それだともう、大林映画じゃないですけどね。

主題歌が芋っぽくて良いかなと言う評価です。当時はきっと原田知世ファンで客席は埋め尽くされ大喝采だったのでしょうが…。アイドルも半端ないですね、演技がそうでなくても役者をさせられてたんですもんね。(松田聖子も当時、演技はボコボコに言われてた筈)

 とりあえず、深町くんポジションがイケメンであろうと、ちょっと納得いかないので原作読み返してきます。

映画『時をかける少女』(1983) 主題歌原田知世の“時をかける少女”

原田知世チャンネル 本人主題歌YouTube『時をかける少女』

 主題歌のエンドロールは良きなんですけどね…。wikiでは原田知世は当時の歌いかた出来ないと言っていたけど、大人になって歌がめちゃくちゃ良い感じで歌えてるので、ご本人のチャンネルをご参照下さい。↑

國際画報 当時の映画の映像と主題歌ver. 原田知世『時をかける少女』

↑一応この人のYouTubeチャンネルでは、著作権にお金を払ってるそうなので、当時の映像を違法ではなく配信してるテイらしいです。

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映画『時をかける少女』(1983) 国内外評価

英語評価サイトIMDbでは映画『時をかける少女』(1983)の評価は6.6/10

ALLMOVIEでは映画『時をかける少女』(1983)の評価は2.5/5

海外の評価サイトも古くからなかったでしょうし、この映画を当時見てた人がいても評価サイトに書き込んでないだろうし…。海外では理解出来ないので、低評価なのではないですかね。

日本評価サイトallcinemaでは映画『時をかける少女』(1983)の評価は7.4/10

KINENOTEでは映画『時をかける少女』(1983)の評価は74.4/100

Filmarksでの映画『時をかける少女』(1983)の評価は3.5/5

Y!映画での映画『時をかける少女』(1983)の評価は3.7/5

日本でも流石に、公開当初は評価サイトは無かったし、評価サイトが出来てから色んな年代の人が原作小説からリメイクやドラマを通して、映画では初のこの1983年版を見たんだと思います。

日本では概ね、中か中の上くらいの評価でしょうか。 ファンタジー(SF)してて恋愛が純愛に映ったり主題歌効果かな。

映画『時をかける少女』(1983) 画像:IMDbより

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